大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和49年(オ)19号 判決 1974年12月06日

上告人

鹿児島トヨタ自動車株式会社

右代表者

諏訪秀二

右訴訟代理人

竹中一太郎

被上告人

大津シズエ

被上告人

大津雅弘

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人竹中一太郎の上告理由第一について。

抵当権の実行による不動産競売手続において配当期日が開かれ、配当表が作成された場合、期日に出頭した債務者又は抵当不動産の所有者が債権者の債権に対し異議を申し立て、期日に異議が完結しなかつたときは、右債務者又は所有者は、配当表に対する異議の訴を提起することができるものと解するのが相当である。けだし、債務者及び所有者は、競落代金がその受取るべき者に交付されることに利害関係を有するから、競落代金配当の段階においてこれらの者に右のような異議の訴を認めることは、なんら競売法の精神に反しないし、このような異議のある債務者又は所有者の不服方法を単に債務ないし抵当権不存在確認訴訟の提起だけに限定すべき理由は存しないからである(最高裁昭和二九年(オ)第五六三号同三一年一一月三〇日第二小法廷判決・民集一〇巻一一号一四九五頁参照)。これと同旨の原審の判断は正当であり、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二ないし第五について。

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その認定した事実関係のもとおいて所論表見代理の成立を否定した原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、または原審の認定にそわない事実関係に基づき原判決を論難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(小川信雄 岡原昌男 大塚喜一郎 吉田豊)

上告代理人竹中一太郎の上告理由

第一、本案前の抗弁について、原判決は競売法による不動産競売手続においても債務者および所有者は配当者に対する異議の訴訟を提起しうるもの(その結果配当金は異議訴訟の裁判確定まで供託される)と判断したが、任意競売手続においては債務者及び所有者が抵当権乃至債務の不存在を主張して争う方法は別途に抜本的な方法があるし、抵当権設定登記という厳重な手続を踏んだものが、仮差押債権者の場合と全く同様に異議訴訟の裁判確定まで債務者乃至所有者の疎明もない異議陳述という一事により何等の保証なくして配当を受けることができないことは抵当権者の利益を著るしく侵害するものであるから、配当異議訴訟を認めることはできず、これを認めた原判決は競売法に関する法律の解釈を誤つたものである。<以下、省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例